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礼賛 -海-


 あの青い海に溶けていきたい。
 青く、深く、底のない海に。

 海という幻想は、人をひきつけてやまない。あの青さは人の奥底を呼び覚ます。ゆえに、ある人は海に憧憬を、ある人は海に恐怖を覚える。
 無限の水。
 無限の青。
 無限のぬくもりと、無限の光と。
 無限のつめたさと、無限の闇と。
 四つすべてそなえた存在は、青く青く広がっている。
「そこを泳ぐ者よ、わたしはあなたがうらやましい」
 青い水とともに生きるものもまた、人をひきつけてやまない。
 小さなガラスのうちに、青い水を再現しようとしてしまうほどに。てのひらにおさまる青い水に、無限のぬくもりを閉じこめ、無限のつめたさを閉じこめる。
「泳ぐ者よ、うつくしい」
「泳ぐ者よ、ずっとそばにいて」
 海という幻想に近づくために、人はガラスをそばに置く。
 ああ、でも。
 あの青い海に溶けていきたい。
 青く、深く、底のない海に。
 ぬくもりにただよい、つめたさにこごえ。
 光に心うごかし、闇に心をこらす。
 海は人のそとにある。海は人のそばにある。海は人のうちにある。
「海よ」
「わが愛しき水よ」
 人は海を望む。
 青く、深く、底のない海に。
「泳ぐ者よ、ずっとそばにいて」
 ガラスのうちに海を閉じこめ。
 その冷たさに、心あたためる。


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初出:2012年壬辰02月11日

[HEAVEN'S GARDEN]様から背景画像をお借りしました。